第8話「尻納」
羅生門と別れてから数日が経った。
忘年会には猥系は参加していなかった。だがひではいた。ゆずゆの保護は大丈夫だろうか、と思い尋ねると、そっちこそ羅生門の保護は大丈夫なのか、と訊かれた。
そういえばそうだ。何やら奈良のほうでは女児が誘拐されて殺害されたという報道がされていたではないか。子供を守るべき大人が子供を脅かすというとんでもない構図になっている。これはまずい。世はロリコンに溢れている。はっきり言って羅生門はロリ以外の何者でもない。それこそ誘拐されでもしたら、猥褻目的なのは間違いない。
そう思った俺は、すぐさま羅生門に電話し、仏壇に備え付けてある棍を装備するように指示した。使い方は帰ってから教えてやるとして、とりあえず持っておけば護身用くらいにはなるだろう。
そうやって不安材料を消しながら、俺は年末を過ごしていた。何やら世間では「あけましておめでとう」などという声が聞こえる。この国は12月34日運動に参加させてやっているはずなのに、まだまだ浸透率が低いようだ。嘆かわしいことだ。
まぁいろいろな事があって、俺は京都に戻ってきた。一人残してきた羅生門の事が気になって、予定を繰り上げて大晦日に帰ってきたのだ。
ふと頭をよぎるのは、別れる直前の寂しそうな表情だ。一人に残してきて良かったのだろうか、と。
部屋の鍵は開いていた。ということは、羅生門が来ているということだ。俺はやはり嬉しくなり、入りざまに言った。
「ただいま、羅生門」
返事はなかった。部屋に入ると、羅生門が布団もなしに寝ていた。いわゆる雑魚寝だ。
「おいおい風邪ひくぞ羅生門手ええええええええええええええええぇぇぇぇなんでおまえ裸やねん!」
そう、羅生門は一糸纏わぬ生まれたままの姿でそこに横たわっていたのだ。いかん、ここからではお尻の穴が丸見えである。俺の精神衛生上かなりまずい。
俺はとりあえず羅生門に布団をかけた。気持ちよさそうに寝息を立てている。人の気も知らずに。襲われても知らんぞ。まぁいい、こいつを襲うのは俺だけだ。
そして部屋の中を見回した。きれいに片付けられている。俺の留守中に羅生門が頑張ってくれたのだろう。ありがたくて素直に感謝してしまう。
テーブルの上には、別れるときに渡したピンクローターが転がっていた。
……さて。
こいつはこれをどのように使ったのだろうか。
そのときだ。後ろでもぞもぞとした動きがあったのは。
「ん……め、冥王?」
「お、羅生門、起きたか? おまえ服ぐらい着ろよ」
「あまりに気持ちよかったからつい、脱いだままで寝てしまったのだ」
「き、気持ちよかったからって……」
い、いかん。鼻血が出そうになった。違う違う。羅生門は昼下がりの太陽光が心地よくて寝てしまったと、ただそれだけのことを言っているに過ぎないんだきっと。ローターの使い方なんかこんなガキンチョがわかるわけがない。
「な、なぁ羅生門。これ、おまえにやったこれ、これはどうやって使ったんだ?」
思わず息が荒くなってしまうのを止められない。なんて背徳的なんだろう。
「それか? そなたがそれをそなたと思えと言ったから、肉体干渉の練習代にさせてもらったぞ」
やっぱりですか!?
「初めては冥王に、と決めておるのだ。だからわらわは、頑張って練習したのだ。あ、もちろん、前のほうは触っておらぬぞ。……その、後ろの穴で、ずっと……」
俺は倒れた。いやもう倒れるしかなかった。感動した。
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