「ねえ、こんなところに呼び出してなんの用なの?」
 僕は昼休みに桐屋さんを誘って校舎裏に連れ出した。桐屋さんは昼食を食べて間もなかったようで少しご立腹のようだ。それでも人気の少ない場所に来たことで少しは落ち着いているようだ。これから何が始まるかも知らずに……。
「桐屋さん」
 僕は桐屋さんの質問には答えずに切り出した。答えずとも、すぐにわかることだから。
「前から思ってたんだけどさ、うちの制服って桐屋さんみたいなスタイルのいい子のラインを強調していて刺激的だよね」
「え? な、何を……?」
 桐屋さんは訝しげな表情で僕をみた。僕が何を言おうとしているのかはかりかねているのだろう。
 ……まぁいい。こうも察しが悪いとは思っていなかったが、無理矢理わからせてやるのも悪くはない。
「こういうことしたいカッコだって言ってるんだよ」
 そう言って、桐屋さんのぷよぷよを乱暴に鷲掴みにした。もちろん、制服の上から。
「きゃっ」
 桐屋さんは素早く僕の腕を払いのけて胸を腕で隠すように後ずさった。
 初々しいというかなんと言うか。ま、調教可能だということはこれまでの調査の結果から確認済みだから遠慮なんてしないけどね。ネタもそろってるんだし。
「どういうつもり? セクハラよ!」
 ようやく彼女にも自分がされようとしていることの意味がわかってきたらしい。理解が遅くて困る。
「僕が一方的に桐屋さんに嫌がらせをしたら、確かにセクハラだね」
「一方的じゃない。私は……」
 同意なんてしていない。そんなことは言わせない。僕はYシャツの胸ポケットに入れてあったスナップ写真を取り出して、桐屋さんからも見えるように眼前に示してやった。
「メール便のバイト、だよね?」
ど、どうしてそんなものを……
「確かうちの学校はバイト禁止だったよね」
 昨日、誠太郎と一緒に下校したのは幸運だった。駅前で桐屋さんの姿を見かけたとき、何か証拠は残せないかと思っていたら、隣で誠太郎がシャッターを切っていたのだ。誠太郎は写真が撮れれば満足らしいから、先生にチクるつもりもなく、快く焼き増し写真を僕にくれた。でもだからといって僕までもが写真があるということだけに満足しなければならない道理はどこにもない。
 これで材料はそろった。昨日、そう確信した。
「桐屋さんには同意してもらうつもりだから」
 同意の上での性的交渉ならば問題はない。もとより脅迫するつもりなのだから結局は法に触れるのだが、桐屋さんを縛り付けるだけの強制力が必要なのだ。
 だが彼女は意外にも開き直った。
「その写真に写ってるのが私だという証拠が何処にあるの?」
 いや、彼女が開き直るのは意外でもなんでもない。相手が不正でくるなら多少の不正には目をつぶる。それこそが彼女らしさというものだ。隠し撮りに脅迫罪。あぁ、言いつけられたらヤバイよな、多分。
 でも、そんなことで引き下がる僕じゃない。言ったはずだ、材料はそろっていると。
「確かにこの写真じゃナナメ後ろからうつってるから顔だけみて桐屋さんだと断定するのは難しいかもね」
 僕はわざと遠まわしに言った。素直に相手の反論を認めることで、かえってその反論を覆すだけの論拠があることを匂わせるのだ。
「だったら私じゃないわよ」
「いや、これにうつってるのは桐屋さんだよ」
 そう言って、僕は写真の一転を指差した。
「後ろから撮ったからこそ、桐屋さんだってわかったんだよ。この服装じゃ、どうせ前から撮っても顔ははっきりわからないからね」
「……!」
 桐屋さんは絶句した。そりゃそうだ。僕が指差した点には、桐屋さんの自転車に貼ってあるものとまったく同じもの、自転車通学許可シールが貼られていたのだから。
「ここには桐屋さんの学生番号まではっきりとうつっているけど? これでもまだ否定する気? なんなら今から職員室に行ってこの写真見せて学生番号の確認してもいいけど。あ、でもそれじゃバイトしてることがばれちゃうからまずいのか」
 僕はクククと喉の奥深くで笑った。誠太郎のカメラが精巧で助かった。
「……」
 桐屋さんはもうそれ以上何も言わなくなった。ようやく、自分が置かれた立場というものがわかったらしい。そう、聞き分けが良い子は好きだ。
 悪いな、誠太郎……。僕は心の中で誠太郎に謝っていた。
「じゃ、こっちに来て」
 桐屋さんはすっかりと従順な牝奴隷に成り下がった。これも日々徐々に洗脳した賜物だろうか。
 僕はまず桐屋さんの後ろから腕をまわして両方の胸を揉み始めた。いや、どちらかといえば、いきなり揉みしだいたといったほうが正確か。だって、制服が胸のラインを強調しているものだから、毎日毎日この豊満なぷよぷよを掴みたくてたまらなかったから。
「……っ」
 桐屋さんは声を殺していたから鳴き声は聞けないが、僕の手の動くリズムに合わせて鼻息が漏れたりすすり上げたりしている。
 声を出さないことが彼女なりの最後のプライドなのだろう、身体は好きにされても心まで好きにはさせまいとする……。
 だが当然僕はそれだけで満足するつもりはさらさらなかった。僕としては順序が逆なのだから。本来ならば、先行して洗脳したのだから脅迫した時点でおとなしい牝犬になるはずだった。その点、桐屋さんは手ごわい。
「おもしろい……」
 思わず僕にため息を漏れさせる。桐屋さんはそんな魅力に溢れる女の子だ。だから僕は……。
 僕は右手はそのままで、左手を桐屋さんの下半身へと這わせた。少し汗ばんだ太股が指に心地良い。
 右手を上半身に残したのは、利き腕で上半身を支配していないと、逃げられる危険性があったからだ。正直、脅迫のネタとしてはバイトの写真だけでは弱かった。こうやって実際に僕も罪に手を染めた以上は、あとで逆に脅迫されるということも十分に考えられる。となれば、それ以上の脅迫のネタを今、つくりあげるしかないのだ。ズボンのポケットに忍ばせた、使い捨てカメラで。




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