「両手でスカートをたくし上げて」
僕はそう桐屋さんの耳元で囁いた。息が耳にかかったようで、身体をびくりと震わせる。それがことさらに僕の欲望を奮わせた。
桐屋さんは両手の行き場を決めあぐねているようだ。言うことを聞かないといけないけど、そんなことは恥ずかしくてできない、とでもいったところか。
僕は太股には這わせていた左手の指を内股沿いにスカートの中へ滑り込ませた。少々焚きつけてやらないと、埒があかないもんな、なんて思いながら。
「ほら、はやく」
「……」
なおも桐屋さんは無反応。まったく、気の強いったら。
「何を恥ずかしがってるの。せっかく誰にも見られないようにこんな人気のない場所に呼んだんだからさ」
僕がそう言うと、桐屋さんはおずおずとその両手でスカートの裾を掴み、少しだけ持ち上げた。
「もっと」
彼女の手が少しだけ持ち上がる。
「もっとだよ」
念を押すと桐屋さんは観念したらしく、苦い息を漏らしてついに桐屋さんの白いショーツは前方に露わになった。とはいえ、背後にいる僕にはほとんどその様子が窺い知れない。ぷよぷよ女子高生がスカートをたくし上げている図。その甘美な響きにやられて、思わず理性の赴くままに正面から食らいついてやりたかったが、すんでのところで思いとどまった。まだ、その時ではない。今日のところは桐屋さんを僕の従順な肉奴隷に仕立て上げるための準備をしなければならない。要するに僕の使い捨てカメラで桐屋さんの醜態を写真に収めること、それが今日の僕の任務だ。
僕の左手の指はすでにショーツに触れるギリギリのところを這って桐屋さんをもてあそんでいたが、一旦、彼女の脚から離した。
そして左手でズボンのポケットを探りながら右手を桐屋さんの首筋から胸元に挿れ、黄色いシャツの上から胸を揉みしだいた。
(ほぅ……)
僕は意外に思った。シャツ越しに揉む桐屋さんの胸は制服の上から揉むよりもよほど弾力に富んでいたのだ。というか、この直接的な突起の感触は間違いなくノーブラだ。
今日びの女子高生は皆ブラぐらいは着用するものと思っていたが、なかなかどうしてこの桐屋さんという子は普通のことは一味違っていて楽しませてくれる。もっとも、この黄色のシャツがスポーツウェアかなにかで、ブラの代わりをしているのかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。ブラなんかあっても邪魔なだけだから。
直接的な感触は桐屋さんにとっても同じらしく、胸の先から脊髄を通して脳に瞬間的に送られる電波信号のような快感を相手に、なんとか声を出すまいと必死で身体をよじらせている。彼女はそれが快感だとはわかっていないのかもしれない。けれど、僕はそんな桐屋さんの姿がたまらなく愛しくなってしまい、気付いたときには桐屋さんの耳たぶを加えていた。……これも脊髄反射なのだろうか。
「はぁっ……」
流石に耳たぶは刺激が強かったらしく、かたくなに閉じられていた桐屋さんの唇から甘い息が、ほんの一瞬だけ漏れた。
これだ、僕が聴きたかったのは。豊満なぷよぷよの持ち主のさえずりを。虚勢を張る少女が快楽に溺れいていく姿を。
ポケットからカメラを探り当てると、急いで取り出してそれをたくし上げられたままのスカートの中へ持っていった。今思えばショーツ履いたままだけどまぁいいか。後で脱がせたときにでもまた撮ればいい。そう思って一思いにシャッターを切った。
カシャッ
必死に身悶えしていた桐屋さんは僕がスカートの中の写真を撮ろうとしていることになんか気付いていなかったようだが、流石にシャッター音を聞いて自分が新たな写真を撮られたことに気付いたらしい。
「なっ、なにをしたの?」
「後々のためにね、保険をかけておこうと思って」
口の端を吊り上げる僕を、桐屋さんは思い切りにらみつけた。
「……意気地なし。そんな卑怯な手でしか人を従わせることができないなんて。あなた、最初から撮るつもりだったのね?」
「普通はじめに気付くと思うけどなぁ。じゃあ桐屋さんは、身体を僕の好きにもてあそばせて、自分は気持ちよくなってあんあん喘いで色っぽい声を僕に聞かせればそれでバイトの件も見逃してもらえると思ってたわけだ」
わざと淫語を連発した。そのほうが女の子を黙らせやすいと思ったからだ。正直、僕は苛立っていた。理由は、たぶん、はっきりしていた。
胸を揉む手の力を強くした。いや、自然に力が入ってしまったというべきか。
「くっ……卑怯者!」
「なんとでもどうぞ」
自分でも意外なほど目の前の女の子に劣情している。その上、その女の子に意気地なしだの卑怯だのと散々言われて自尊心が傷ついてしまった僕は、どうやら思考のタガがはずれてしまったようだ。ここからは、理性の出番というわけか。
僕はショーツ越しに桐屋さんの秘所、もっとも敏感な部分に触れた。桐屋さんには僕の考えうるもっとも恥ずかしい醜態をカメラの前で晒してもらうことにしよう、そんなことを、考えながら。
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