ミオン
「新しいガンダム? どういうことだ?」
住井
「はい。撤退中のデータでは連邦に攻撃していたことから察するに、連邦の者ではないと思われますが」
ミオン
「まさか、個人でつくられたものなのか!」
住井
「民間の軍需産業でさえ、まだモビルスーツ製造には程遠い技術力のはず。
それなのに、個人でモビルスーツをつくるなど……」
ミオン
「むうぅ、何かの変異の前兆とでもいうのか……」
(あるいは、変異はすでに起きていたというのか。ビアン博士の死とともに……)
匠
「や、やばいよ! このままじゃ……角度が足りない!!」
純
「くそっ、誰だよ航宙中に居眠りなんてしてた奴は!」
七瀬
「悪かったわね! 戦闘直後で疲れてたのよ!」
純
「そんな言い訳で、400人が死んでたまるか!」
かぐら
「みなさん、操縦のほうは私がなんとかしますから、不時着に備えて艦内のみなさんを
避難させてください」
冷静な物言いは、芹沢かぐら。しかし彼女はすぐに熱くなる性格の持ち主だ。
匠
「一人で大丈夫?」
かぐら
「ノープロブレムです! 任せてください」
匠
「わかった。行くんだ、みんな!」
純
「おまえもいくんだよ」
匠
「ちぇっ……」
そんなこんなで、リーベ=デルタは日本近海に不時着を余儀なくされた。
ズウゥゥゥゥゥゥン
浩平
「うわっ、大丈夫なのか、この艦」
茜
「きゃっ」
司
「大丈夫、茜?」
茜
「あ、うん……」
詩子
「にしてもあわただしいよねー、これからどうなることやら」
そこに七瀬が走ってきた。
七瀬
「ちょっとあんたたち! なにくつろいでんのよ。不時着するから無重力室に入って!」
浩平
「はいはい、いこーぜ、城島。茜に、柚木も」
七瀬
「まてぃ」
浩平と司が七瀬に捕まった。
七瀬
「あんたら二人は戦闘態勢よ」
司
「やっぱり?」
茜
「司……」
七瀬
「!」
七瀬は茜のまなざしの意味を、女の勘で察した。
七瀬
「無事に着陸できたら、真っ先にこいつ里村さんとこに向かわすから」
茜
「えっ……は、はい」
真っ赤になって頷く茜。
七瀬
「まったく、鈍いわねあんた」
七瀬は得意のエルボースマッシュを司に打ち込んだ。
司
「いっててて、なにすんのさ〜」
なんとか体勢を取り戻しつつ太平洋に向かって徐々に高度を下げるリーベ=デルタ。
ブリッジでは、芹沢かぐらただ一人だけ残り、角度の最終調整をしていた。
かぐら
「……これでよし、と。はぁ〜、やっと地球に帰れる〜。やっと舞人さんに会える〜」
かぐらが口にしたのは、ホの字になっている男の名だった。
かぐら
「それにしても、さっきの翼のガンダムに、黒い昆虫ロボット……思ったよりも因果律の狂いが
激しいみたい……はやくR−0を完成させないと」
そこに乗員を避難させ終わった七瀬と匠、純、そして南条が入ってきた。
南条
「七瀬さん、あの二人は?」
七瀬
「コクピットに放り込んでおきました」
南条
「もしものときは、あなたもお願いね。芹沢さん、状況は?」
かぐら
「2分後に太平洋に不時着です。この分だとダイナマイトどかーんは防げそうです」
匠
「どかーんって……」
南条
「不時着点から一番近い連邦の基地は?」
かぐら
「日本の極東支部です。けど……」
南条
「どうしたの?」
かぐら
「他にも、基地と思われるものの反応が多数あるんです。所属は不明ですけど。
私たちが宇宙に行っている間に、およそ倍になってますね〜」
南条
「倍!? そんな……そんな大規模な軍備拡張は聞いてないわ」
純
「ミオンの出現に対する処置なのか……?」
匠
「それにしたって速すぎるよ。物理的にちょっと無理じゃないかな」
南条
「そうね。技術革新でも起きない限り、こんなことには……」
七瀬
「もしかしたら、起こってるのかも」
南条
「え?」
七瀬
「さっきの羽ついたガンダムと、虫みたいなやつよ。ガンダムのほうは知らないけど、
虫のほうは直接戦ってみて、正直こっちのガンダムのほうが劣ると思うわ」
純
「本当か! ガンダムは連邦の最新兵器だぞ」
南条
「連邦に限らず、飛躍的な技術の進歩があったとでもいうの…?
一体、地球に何が起きているの……?」
七瀬
「地球どころか、宇宙も含めた地球圏全体に何かが起きているのよ。
ミオンだって出てきたし」
かぐら
「……まもなく不時着します。みなさん、衝撃に備えてください!」
スパロボインフィニッタイ! 第四話「因果律」
ずううううぅぅぅぅぅん
七瀬
「わ、意外と衝撃が少ないわね」
かぐら
「下は海ですからね」
南条
「芹沢さん、とりあえず極東支部に向かいましょう。極東支部に進路をとりつつ、
穂刈くん、通信を繋いでちょうだい」
純
「待ってください先生、近海上に熱源反応! モビルスーツ2機です!」
南条
「ま、まさかミオンが?」
匠
「わかりません、はじめて見る機体、照合データありません!」
純
「来ます!!」
リーベ=デルタに接近してきたのは、ザクを改修し、強化したモビルスーツ、ハイザックだった。
パイロットは杵築悠利と高杉響子。日本を中心に活動するゲリラ集団のリーダー格である。
悠利
「おい響子。なんだ、あの戦艦?」
響子
「ありゃあ連邦の士官学校の試験艦さ」
悠利
「ほぅ、おもしれぇ。このハイザックのいい演習相手になりそうじゃねェか」
響子
「ちょっ、悠利! あれに手ェ出すつもり? 相手は連邦だよ!?」
悠利
「いいじゃねェか、ただの演習だろ?」
響子
「でも、かないっこないよ」
悠利
「アァ? 俺が坊っちゃんたちなんかに負けるわけねェよ」
そこにリーベ=デルタからの通信が入ってきた。
南条
「あなたたち、ミオンなの? 所属を教えなさい!」
悠利
「ハァ? 所属なんかねぇよ。誰がミオンだと? 俺は悠利、杵築悠利だ」
匠
「あのモビルスーツ、ミオンのザクっていうのに似てるね」
悠利
「ハッ、これはな、ミオンのやつらから奪って改造したモビルスーツだぜ」
七瀬
(改造? やっぱり、個人の技術でさえも、飛躍的に発達している……)
悠利
「てなわけで、こいつの実験台になってもらうぜ」
南条
「くっ、勝手な事を! 折原くん、城島くん、出撃よ! 七瀬さんも急いで!
芹沢さん、リーベ=デルタは動けるの?」
かぐら
「少し修理が必要ですから、5分ほど動けません」
南条
「わかったわ。みんな、といっても3人だけど、5分だけ本艦を守って!
その後、全員回収し、全速前進で極東支部に向かいます!」
浩平と司の出撃準備が整った。
浩平
「よし、出番か! ジム、いくぞ!」
司
「城島、出ます!」
2機のジムがハッチから颯爽と飛び出す。
悠利
「ハッ、いっちょまえにモビルスーツなんか駆り出してきやがって。痛い目見るぜ!」
響子
「ちょっと悠利ィ、調子に乗らない。腐っても連邦だよ。こっちは2機だし……」
悠利
「響子、弱気になったら負けるんだ。なら、先手必勝ってな!!」
杵築のハイザックは一瞬でマシンガンを構え、連射した。
司
「危ない、折原!」
司のジムが浩平のジムをかばってマシンガンの直撃を受けた。
浩平
「城島!」
司
「くっ……ミオンのザクとは威力が全然違う…」
悠利
「ははははっ、そりゃそうだ。あんなヘボテロリストとはわけがちがうんだよ!」
浩平
「くそっ、このやろう!」
動けない司を置いて悠利に駆け寄る浩平のジム。
そのままハイザックの腕をつかんだ。
悠利
「く、こいつ、離せよ!」
浩平
「答えろ、ゲリラ! なぜ俺達の邪魔をする!? 今はミオンも出てきて、それどころじゃないだろう!」
悠利
「ケッ、笑わせやがるぜ! テメェらがふがいないから、ミオンなんかが調子に乗るんだよ!
連邦なんかに任せていられるか!」
浩平
「それならなおさら、力をあわせるべきだろ! 内乱しててかたづく問題か!」
悠利
「うっせーんだよ、連邦に力なんか貸してたまるか!
それにな、テメェの運もここまでなんだよ」
浩平
「なにっ!?」
悠利のハイザックが今度は浩平のジムを掴んで離さない。
響子
「しっかり抑えときなよ、悠利!」
響子のハイザックがヒートホークを手に突っ込んでくる。
浩平
「くっ、このままじゃ……」
七瀬
「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ものすごい怒声とともに、ガンダムが響子のハイザックにタックルをかました。
響子
「うあぁっ」
ざばあぁぁん
悠利
「響子!」
海に落ちた響子のハイザックを助けるため、悠利は浩平のジムを解放した。
七瀬
「感謝しなさいよ、折原」
浩平
「無茶な使い方するなぁ……メカニックがかわいそうだよ。って、城島は?」
七瀬
「回収しといたわ。思ったよりもダメージが大きいみたい」
浩平
「そうか……厄介な敵だな」
悠利
「ちっ……そいつぁ新型かよ。これじゃ分がわりぃ、ずらかるぞ」
響子のハイザックを背負ったまま、悠利のハイザックは撤退を始めた。
七瀬
「逃がすかー!」
浩平
「やめろ、七瀬。艦を守るのが最優先だろ?」
七瀬
「うぅー、確かに……」
ガンダムとジムは帰艦した。
匠
「参ったねー、突然ゲリラに襲われるなんて」
浩平
「あぁ。確実に異変は起きているな」
南条
「急激な技術の向上、ね」
詩子
「大変だね、地球も。ねぇ、茜」
茜
「うん。司、大丈夫……?」
司
「うん、体のほうは何ともないよ。あのジムはもうダメだと思うけど……」
七瀬
「あのさ、なんでアンタたちまでブリッジにいるのよ」
南条
「穂刈くん、極東支部との通信は?」
純
「繋がりました。通信、回します」
モニターに極東支部長官代理、深山美雪の顔が映る。
美雪
「このたびは、長旅ご苦労様でした。
早速本題ですが、今地球では異変が起こっている、これはご存知ですね?」
南条
「ええ。おかげで私たちは今、右も左もわからない状態です。
そちらで補給を受けさせていただきたいのですが?」
美雪
「えぇ、構いませんよ。それと、DC日本支部から、あなた方へと、何機かのロボットを預かっています。
そちらもお渡しします」
南条
「え……? えぇ、了解しました」
美雪
「それから、我々から提案があるのです。混乱の地球を救うために。
詳しくは、こちらでお話いたします」
南条
「わかりました。それでは」
通信が切られた。
浩平
「どう思う? 城島」
司
「うん。まるで、DCは僕たちが極東支部へ行くことを知っていたかのように補給物資を極東支部に
預けた……」
七瀬
「何者かに踊らされてるっていうの……?」
かぐら
「……とにかく、極東支部へ行ってみましょう。そしたらきっと何かわかりますよ」
南条
「そうね。進路、極東支部へ!」
第5話へつづく
<あとがき?>
因果律、ですね。スパロボファンの方は、この言葉一つで、お話の大筋が見えちゃうかもしれない。
それぐらい大胆なサブタイトルですね、今回は(汗)。
ってか、今回、ほとんど戦ってませんね。筆者としても予想外の展開です。
また4人も新キャラ出しちゃったしね♪
<新キャラ解説>
☆杵築悠利(久遠の絆)
ゲリラのリーダー。原作どおり、武くんとは仲が悪いことになっています。
対極を見極めようとせず、私情で動いてしまう傾向にあります。
そのため、彼は後々連邦とは敵対する立場になります。
キャラクター的には、すごい男らしくするつもりです(あくまでつもりです)。
それでいて、人間としての醜い部分も一身に背負ってもらうことになります。
かわいそうですが、個人的に思い入れの強いキャラなので、頑張って動いてもらいます。
☆高杉響子(久遠の絆)
ゲリラのリーダー格。気の強いスケバンだが、悠利には甘い。
久遠キャラは、ほとんどが過去からの因縁を持っているので、因縁のない彼女は、
疎外感を抱いてしまうことになります。
でも彼女は、悠利のことを単純に好きな、一途な女のコなんですね。
そのへんがうまく表現できるかどうか、心配です。
☆芹沢かぐら(それは舞い散る桜のように)
舞人さんLOVEの女のコ。ツヴァイ所属。彼女は天才であるという設定にさせてもらっています。
台詞からも伺えますが、物語の中核をなす人物の一人ですので、今後の動きには要注目です。
☆深山美雪(ONE〜輝く季節へ〜)
連邦軍極東支部支部長代理。微妙に姉御肌(?)。
この人が出てきたということは、第五話ではあの人が登場ですね♪