連戦のために傷ついたリーベ=デルタは、幸い襲撃に遭うこともなく極東支部にたどり着いた。 一行は美雪のいる会議室まで通された。 深山美雪 「お待ちしてました。代表者はどなたですか?」 南条小枝子 「私です。教官の南条小枝子です」 美雪 「申し遅れました。極東支部支部長代理の深山美雪と申します」 南条 「代理? 芦屋少佐はどうされたのですか?」 美雪 「ジャブローの重役サミットに召集されて、今はいないんです」 南条 「そうですか……」 折原浩平 「ところでさ、今地球で起こっている異変っていうのを教えてくれないか?」  浩平がなれなれしい態度で問うと、それを七瀬が咎めた。 七瀬留美 「ちょっとアンタねぇ、口の利き方っていうものを……」  しかしそれを遮ったものがあった。 美雪 「あれ、折原くんじゃない?」 七瀬 「え……」 城島司 「二人、知り合いなの?」 浩平 「士官学校の先輩だよ、いろいろあってな」  浩平は面倒くさそうに答えた。 浩平 「みさき先輩と一緒に軍を辞めて日本の研究所に就職したって聞いてたけど、ここだったのか」 美雪 「噂が早いわねぇ、ここに来たのつい一ヶ月前よ?」 浩平 「みさき先輩からメールが来たんだよ」 南条 「はいはい、感動の再開はここまで。深山さん、今地球に起きていること、聞かせてもらえるかしら?」  美雪は自分が職務を放棄しかけていたことに気がつき、慌てて咳払いした。 美雪 「は、はい。えーっと、まず一週間前にミオンが宣戦布告しましたよね」 柚木詩子 「うん、その直後に私たちが襲撃されたんだよね」 美雪 「あの混乱に乗じて、地球内では、いえ、地球外からも、様々な勢力が姿を現し始めました」 浩平 「勢力? 敵なのか?」 美雪 「すべてがそうとは言い切れないけど」 坂城匠 「具体的には?」 美雪 「まず、地球内の動きですが、日本の地下勢力である百鬼帝国と妖魔帝国が各地を無差別に攻撃しています」 穂刈純一郎 「なんなんだ、それは?」 美雪 「わかりません、彼らが名乗っている名称ですから。これに加えて、以前金がらみの問題で政界を退いた 塩じいが自らをDr.ヘルと称し、機械獣軍団を従えて各地を攻撃しています」 浩平 「はぁ、なんじゃそら」 司 「日本の政界もいよいよってところだね」 美雪 「それから、各地で人間や兵器が突然、光とともに消えるという怪事件が多発しています。 BF団というテロリストも姿を現しています。さらに、日本を中心とした世界各地において、 正体不明の怪物が出現しています。これと類似する事件ですが、同じく世界各地で、 軍人や兵器の形をした生物が無差別に都市を襲撃しています。 これらの問題に対処するため、さきほどお話しましたジャブローでのサミットの結果、 連邦軍の特別常駐軍としてティターンズとOZの結成が決定しました。 芦屋元極東支部長官はティターンズのリーダーに任命されたので私が代理を務めています」 南条 「この一週間でそんなにも大きな動きがあったのね」 美雪 「地球外でも異変は起きています。火星、木星、フロンティア4からの連絡が途絶えています。 月では複数のテロリスト集団が動いています。そしてPLSブラックポイントには 謎の小惑星が出現しています」 南条 「問題は山積みね」 司 「先生、僕たちはこのあと一体どうなるんですか?」 美雪 「そのことならもう考えてあります。といっても、芦屋少佐の提案なんですが」 浩平 「どういうことだ?」 美雪 「試験中のデータを統合すると、 リーベ=デルタのクルーの中からツヴァイの他に即戦力として使えるのは君たちで全員です。 しかしリーベ=デルタは試験用の戦艦なので戦闘には向いていません。 そこで、連邦の最新鋭の戦艦、ホワイトベースをあなたたちに預けます」 司 「え、それって……」 美雪 「士官学校解体後、あなたたちには極東支部私有部隊として動いてもらいます。 でも、あなたたちはもう軍属ではないから、強制はしないわ。 嫌だったら辞退してくれても……」 浩平 「やるよ」  浩平は即答した。七瀬はそれに感心したように息を漏らした。 浩平 「どうせ食いぶちを求めて士官学校に入ったんだ。それが卒業間際に一般人に逆戻りなんてできないよ」 純 「そうだよな。就職先が見つかるっていうんなら、大歓迎だ」 匠 「前に同じ〜」 芹沢かぐら 「はい〜、戦艦があればいつでも舞人さんに会いにいけます〜」 七瀬 「あのね〜、私物化しないの。まぁ、アタシも意義はないけど」 司 「僕も、反対はしないよ」 詩子 「う〜ん、別にいいんだけど、条件があります」 美雪 「何?」 詩子 「茜も連れて行っていい? 調理班のコで、料理の腕なら即戦力だから」 美雪 「本人さえよければ、構わないわ」 詩子 「やった、これで美味しい毎日」 美雪 「では、あとのクルーは残りの生徒の中から希望者を募ることにします」 浩平 「みさき先輩もメンバーに入っているのか?」 美雪 「もちろんよ」 浩平 「あの大食漢は今どこにいるんだ?」 美雪 「光子力研究所に出向中よ。みさきの乗る機体が完成したらしくて」 浩平 「え、先輩、戦えるのか?」  みさきの目が見えないことを知っている浩平は、本当にみさきが戦力になるのか疑った。 美雪 「大丈夫よ、あれであのコ、シミュレーションじゃすごい成績なんだから!」 浩平 「本当に大丈夫なのか……?」 美雪 「あ、それから折原くんと城島くんにと、新しい機体をDCから預かっているわ」 司 「新しい機体?」 美雪 「えぇ。試作型ゲシュペンストといって、なんでも、PTX計画の過程で出来上がったマシンだそうよ」 浩平 「PTX計画? なんだ、それは」 美雪 「パーソナルトルーパーっていってね、個人の脳波にフィットしたコンピュータをつくっているの。 それで君たち二人は、試験中の戦闘結果から、試作型のパイロットに適任と判断されたってわけ」 司 「そうなんだ、やったね、折原」 浩平 「あぁ……」 (だが、手放しで喜べる状況でもないな) 司 「DC……って、なんですか?」 美雪 「ドクーガ・コンツェルン。地球圏でも一、二位を争うほどの軍需産業よ。 テスラ=ライヒ研究所との結びつきが強いようだけど、実際のところ何を企んでいるのか。 地球連邦を裏で牛耳っている伊集院財閥も、形だけのバックアップで、まだまだ秘められた 技術力があるって聞くし、まったく、どうなることやら」 司 「地球圏も決して一枚岩というわけではないんですね」 浩平 「だってのに、突然の異変やら敵勢力やらの多発。先輩は、どう思う?」 美雪 「偶然にしては、立て続けに事件が起こりすぎている?」 浩平 「俺達は何者かの手の上で踊っているだけなのか……?」 司 「あの……テスラ研の地球に残った派は今、何をしているんですか?」 美雪 「ビアン博士の遺志を継いで、異星人来襲に備えた兵器開発に取り組んでいるわ。 今は、SRX計画っていうのをやってるってきいているわ」 浩平 「SRX、か。またごつそうなのやってんな」 美雪 「彼らはミオンと相反する存在だから、敵対することはないと思うけど」 司 「SRX計画をこちらに引き込むことができれば、心強そうですね」 美雪 「うまくいくといいんだけど」  そこへしばらく思案にふけっていた南条が声を割り込ませた。 南条 「お話中申し訳ないんだけど、私はこれで失礼させていただくわ」 司 「先生、どこへ?」 南条 「学校が解体されたら、私の教官としての任務も停止されるから、一旦、連邦の本部へ戻ることになるわ」 司 「じゃあ、ジャブローへ?」 南条 「えぇ。深山さん、ミデアを1機、貸していただける?」 美雪 「はい。できれば私たちがお連れしたいのですが、独立部隊として、今、日本で出来る限りのことは やっておきたいのですぐにはジャブローに向かえないんです」 南条 「気にしないで。私なら一人で大丈夫だから」 美雪 「護衛を伴わせます」 南条 「ありがとう」 司 「あ、あの……」  司は消えかかる声を絞り出していった。 司 「僕に、護衛させてください!」 浩平 (おぉ〜)  浩平は心の中で司に拍手を送った。しかし司の精一杯の意思表現は、やんわりと断られてしまった。 南条 「ありがとう、城島くん。気持ちだけ、受け取っておくわ。あなたには、ここでやるべきことが あるはずよ」 司 「でも……」 南条 「ジャブローでまた会いましょう」 司 「……はい。ご達者で」  司はようやくのことで南条に敬礼をした。  丁度同じ頃、光子力研究所から、スーパーロボット、マジンガーZが発進しようとしていた。 川名博士 「いいかい、みさき。無理するんじゃないぞ」 川名みさき 「わかってるよ。それじゃ、いってくるね」  父親である川名博士にロボットを受け取ったみさきは、マジンガーZを発進させた。 みさき 「まじーん、ごー!!」  向かうは極東支部。  だが発進直後に、光子力研究所からコックピットに通信が入った。 みさき 「どうしたの? お父さん」 川名博士 「大変だ、みさき。極東支部に塩じい……もとい、Dr.ヘルの機械獣軍団が接近している! 急いで防衛に向かうんだ!」 みさき 「うん、わかったよ」  みさきはそれだけ言って、あっさりと通信を切った。 川名博士 「本当にわかったのか……? 我が娘ながら、マイペースだなぁ」 美雪 「いつのまにこんな近くにまで来ていたの!?」 オペレーター 「それが、あたりのミノフスキー粒子が濃くて……」 美雪 「うぅ、機械獣が相手じゃ初陣にしちゃちょっと荷が重いけど……でも、こっちにはガンダムもあるし……」  美雪はいろいろと考えて呟いた。 美雪 「よし、とりあえずいこう! 七瀬さん、折原くん、城島くん、出撃準備を! 他のクルーは急いでホワイトベースへ! 発進させます」 匠 「い、いきなり発進!?」 かぐら 「楽しそうですね〜、腕が鳴ります〜」 詩子 「でも、操縦はどうすんの?」 美雪 「操縦系統はリーベ=デルタと類似しているから問題はないと思うわ。 艦長は、え〜っと……ツヴァイのリーダー、あなたよ!」 純 「お、俺か……」  純は緊張した顔つきになった。そんな純の背中を、匠は手のひらで勢いよく叩いた。 匠 「はいはい、緊張しすぎだよ、純。肩の力抜いて」 純 「そんなこといったって、艦長だぞ、か、かかか、艦長……」 詩子 「うわぁ、アガり過ぎ……」 匠 「ホント、純なヤツ」 美雪 「ホラ、あなたたち急いで。私も出撃するわ!」 かぐら 「出撃って、何で出撃するんですか?」 美雪 「光子力研究所からもらった試作機があるのよ。それで出るわ」  その言葉を聞いたオペレーターが血相を変えて立ち上がった。 オペレーター 「ちょっと待ってください! 支部長代理が出撃されたらここの指揮はどうなるんですかっ?」 美雪 「あなたがやるのよ」 オペレーター 「へっ?」 美雪 「辞令、極東支部支部長代理代理に任命する。以上」  それだけ言って、美雪は他に少し遅れて走り去っていった。 <第五話「黒鉄の城」> 美雪 「修理装置もついたお役立ち後方支援ユニット・アフロダイA、出撃!」 浩平 「深山先輩、やけに張り切ってるな」 美雪 「当たり前じゃない、これが私たち極東支部第13独立部隊ロンド=ベルの初陣なんだから」 七瀬 「ロンド=ベル、か。悪くないわね」 匠 「むしろカッコイイじゃない」 純 「た、匠っ、無駄口叩かずに操縦に集中しろ! で、出るぞ、ホワイトベース!」 詩子 「あちゃ〜、緊張してら〜」 かぐら 「じゃあ私たちは艦長さんをフォローしましょう」  かぐらが立ち上がり、元気よく手を上げる。 七瀬 「アンタがいればそのカチコチの艦長でも大丈夫ね。七瀬、ガンダム、行くわ!」 浩平 「ゲシュペンスト、初陣だ。派手にやるぞ!」 司 「南条先生、待っていてください。必ず、ジャブローで会いましょう。 城島、ゲシュペンスト、出撃します!」  アフロダイに続いて、ガンダム、ゲシュペンスト2機の順に次々と出撃していく。  最後にホワイトベースが浮上し始めた。 美雪 「全員、急いで散開して。もうそこまで敵が来ているわ」  美雪の言うとおり、カメラモニタで確認できる位置にまで機械獣が接近していた。 敵はガラダK7とダブラスM2が2機ずつ、そして空中要塞グールだった。 浩平 「なんだこいつら、モビルスーツとは違う。それにでかいぞ」 司 「でも、数はあまりいないみたいだから、なんとかなるよ」 美雪 「油断しないで。機械獣の装甲はモビルスーツのそれとは比べ物にならないわ。 一撃の威力もあるから、注意して。えっ、通信?」  突然、味方に通信が入ってきた。送信元はグールだった。 塩じい 「ハハハハハ! 戦争をするなら拠点攻略が一番じゃ。まずは日本の連邦本拠地、極東支部を 潰すのじゃ」 美雪 「あのグールには塩じいが乗っているの? いきなり手ごわい相手じゃない」 塩じい 「むぅ? 娘、ワシはDr.ヘルじゃ」 浩平 「いかん、政界退陣のショックからか、人が変わっちまってる……」 塩じい 「どこまでも人をなめくさりおってぇ! ゆけぃ、機械獣軍団よ、一人残らずひねりつぶせぇ!!」 美雪 「!! 来るわよ!」  ダブラスがミサイルで牽制し、2機のガラダが頭のかまを突き出してきた。 浩平 「くそっ」  ミサイルをかわしつつ、浩平は司に通信をとる。 浩平 「城島、このゲシュペンスト、俺のとおまえのとで少し勝手が違うみたいだな」 司 「うん、僕のは接近戦仕様、折原のは遠距離戦仕様といったところかな」 浩平 「なら、そのまま敵に突っ込め、城島!」  浩平はスコープでガラダの1機に狙いを定めてニュートロンビームを撃ち放った。 ビームは命中しガラダの足をとめることはできたが、その反動で浩平のゲシュペンストは後ろへ倒れこんだ。 浩平 「うわぁ、なんだ!?」 七瀬 「バカね、重力下での戦闘は初めてなんでしょ? いきなりそんな強力なもの使わないで、 おとなしく後方支援してなさい」  動きが止まった浩平を、七瀬のガンダムが庇い、ビームサーベルでミサイルを切り払う。 一方、司は動きの止まったガラダとの距離を一気に詰めていた。 司 「今だ! うあぁぁ!!」  立ち止まることなく、近距離用ビーム、スマッシュビームを放つ。 ニュートロンビームのダメージが大きかったガラダはこれに直撃し、爆破した。 爆発に巻き込まれた司のゲシュペンストは多少のダメージを負い、その場に怯んだ。 司 「僕が、倒せた……機械獣を……」  ひりひりと感動を覚える手はレバーを握ってはおらず、ゲシュペンストは隙だらけだった。 その隙だらけの司に、ダブラス2機のレーザーの銃口が向けられた。 美雪 「なにボーっとしてるのよ、みてらんないわ!」  美雪はアフロダイの両の胸からダブラスに向けて1発ずつ、ミサイルを発射した。 浩平 「城島、動け! 止まったら撃たれるぞ」  浩平はゲシュペンストのスプリットミサイルを残りのガラダに撃ち込んだ。 6発のミサイルが次々とガラダを襲う。何発かは外れたが、確実にダメージはあるようだ。 七瀬 「その隙もらった!」  ガラダが怯んだ隙に、ガンダムが急接近し、逆手に握ったビームサーベルで斬り込んだ。 確かな手応えはあったが、ガラダはまだ動けるようだった。 浩平 「七瀬、上ッ!!」 七瀬 「!!」  ガンダムは咄嗟に右へ飛んだ。ガラダのいたそこは、次の瞬間爆撃された。 塩じいの空中要塞グールが、ガンダムの頭上から爆弾を投下したのだ。 七瀬 「くっ、上からも!」 塩じい 「ちっ、はずしてしもうたか」 美雪 「バカね、今ので味方まで巻き込むなんて。さ、みんな、後はダブラス2機だけよ」 浩平 「はいよ、ニュートロンビーム、スタンバイ!」  しかし、浩平が照準をあわせている間に、ダブラスは浩平に向けてレーザーを撃った。 浩平 「ッ!」  避けきれずに食らう。しかし、浩平の目は閉じてはいなかった。 浩平 「怯むかぁ!!」  そのままニュートロンビームを発射した。 ダブラスは直撃を受け、一撃のもとに爆破した。 司 「す、すごい……」 浩平 (こ、これが、DCの技術なのか……一体なんだこいつは……)  レバーを握る浩平の手は震えていた。 塩じい 「むうぅ、いかん。敵に隙がある今のうちにもう一度爆撃じゃ、急げ!」  そのとき、爆音とともにグールに大きな振動が走った。 塩じい 「な、何事じゃッ!」 七瀬 「ホワイトベース!」  純の指揮するホワイトベースの放ったメガ粒子砲がグールに当たったのだ。 かぐら 「やった、命中ですぅ」 匠 「やるぅ、芹沢さん」 純 「手を休めるな! 第二波、用意! メガ粒子砲、てぇぇぇ−っ」  さらなる攻撃がグールを襲う。 塩じい 「くそっ、急速旋回じゃ! 弾を避けるのじゃ」 美雪 「いい感じね。これならいけるわ」 七瀬 「よっしゃぁ!」  グールが旋回中で、空からの脅威がなくなったため、七瀬は安心してガンダムをダブラスに突進させた。 七瀬 「うりゃあああ!!」  ガンダムはビームサーベルを振り上げたまま接近し、そのままダブラスを蹴り上げた。 そのまま宙を舞うダブラスにサーベルを振り下ろし、ジャンプでその場を離れた。 ダブラスは閃光を放ち消えていった。 浩平 「ヒットアンドアウェイか」 七瀬 「蝶のように舞い、蜂のように刺す。これぞ乙女の美学よね」  意気揚揚と話す七瀬の声を聞きながら、美雪は一人思う。 美雪 (なに、あのコ……強すぎる) 司 「みんな、グールが!」  司の声に全員が反応する。見上げると、グールのハッチが開いていた。 塩じい 「ちぃっ、思ったよりやるおるわ。戦力の出し惜しみなどすべきではなかったか。 残存部隊、全機出撃じゃ!」  開いたハッチから、ガラダ、ダブラスが合計10機も降りてきた。 美雪 「まだあんなに戦力を持っていたの?」 司 「い、いくらなんでもこれは……」 詩子 「ちょっとまって、急速でここに近づく反応があるよ」 浩平 「いったいなにが?」 美雪 「! まさか、みさきが帰ってきたの!?」  噂のみさき、マジンガーZが到着した。 みさき 「おまたせ、美雪ちゃん。ただいま」  この緊迫した状況だったので、みさきの脱力感満点の声には味方はおろか塩じいでさえも一瞬 言葉に詰まった。だが塩じいは気を取り直して仕切りなおした。 塩じい 「むむむ、川名家のせがれの者じゃな。奴には個人的に恨みがあるのでな、娘から八つ裂きにすると いうのも悪くはないのぉ」 美雪 「なんて卑劣な! あの時、川名のおじさまの発見を奪おうとしたのはあなたじゃない!!」 塩じい 「なんとでもほざくがよい。力あるものが最後に笑うのじゃ」 みさき 「その力を持っているのは、私たちだけどね」  みさきのマジンガーが浩平たちの近くに着陸する。 浩平 「な、なんだこのロボットは……」 司 「お、大きい……」 七瀬 「それに、かっこいいわね」 美雪 「これが、日本が世界に誇るスーパーロボットよ」 浩平 「スーパー……ロボット……」 美雪 「それ一体で戦局を一変してしまうほどの破壊力、一個大隊に匹敵するほどの重装甲、 このコンセプトのもと、今の日本では各地で多額の資金を費やしてスーパーロボットが開発されているのよ」 司 「なるほど、それで先に日本各地を回って、スーパーロボットによる戦力増大を図ろうというわけですね」 美雪 「その通り。頼んだわよ、みさき」 みさき 「任せてよ。でも、まだジェットスクランダーが完成していないから、空は飛べないんだけどね」  マジンガーが悠々と腕を振り回しているのを見て、塩じいは憤慨した。 塩じい 「おのれ、どこまでも馬鹿にしてくれる! ショックレーザー、発射じゃ!!」 七瀬 「まずい、来るわよ!」 みさき 「大丈夫、さがっていて」  マジンガーが味方の前に楯になるように立ちはだかった。 グールから放たれたショックレーザーはマジンガーにもろに直撃した。 浩平 「みさき先輩、大丈夫か!」  心配された当の本人は、声の主が誰であるかわかり、意外そうに答えた。 みさき 「なんだ、浩平くんもいたんだ。うん、平気だよ」  煙が晴れ、その姿を現した魔神は、仁王立ちのまま、ピクリとも動いてはいなかった。 七瀬 「ウソ! 直撃を受けたのに?」 塩じい 「なにぃ、そんな馬鹿な!!」 美雪 「これがスーパーロボットの強さよ、塩じい!」 みさき 「今度はこっちからいくよ」  マジンガーは両の腕を勢いよく回転させ始めた。 みさき 「大車輪ろけっとぱーんち」  気の抜けるような声とは裏腹に、剛速球のように両の拳が10機の機械獣めがけて飛んでゆく。 右の拳がダブラスを、左の拳がガラダを貫く。一度や二度の衝突では飽きたらず、 両の拳は何度も何度も機械獣に攻撃をし続けた。  拳がマジンガーの腕に戻る頃には、あれだけいた機械獣軍団は跡形もなく全滅していた。 塩じい 「くっ、引き際を誤ったか……仕方あるまい、川名のせがれよ。今日のところは引き返すが、 次に遭った時にはこうはいかぬぞ。心しておくがよい!」  急旋回したグールは一目散に退散していった。 美雪 「ったく、口だけはでかいんだから。お疲れさん、みさき」 みさき 「うん、私おなかすいちゃったよ。早く何か食べたいな」 美雪 「え……あははは、そ、そうね。基地に戻ったらご飯にする?」 みさき 「うん、それがいいよ」  夕陽に映えるマジンガーZの勇姿を眺める浩平、七瀬、司、その他ホワイトベースのクルーたちは、 その圧倒的なまでの凄まじさに、しばらく呆気にとられていた。 浩平 「これが、一騎当千のスーパーロボット……」   第六話へ続く <あとがきくさいもの>  え〜と、今回は新しいユニットが敵味方あわせると8機も出てきましたね。 もちろん、浩平と司のゲシュペンストは別々のものですよ、武装も違いますし。  っていうか、話が急展開しすぎですか? もしかして。 <新キャラ解説> ☆塩じい(政界の紋章)  注意をば少し。『政界の紋章』はオリジナル作品です。この塩じいとは、実際の政界で 退陣された塩川元財務大臣とは別人ですので勘違いされぬようお願い致します。 まぁモデルが誰かはいわずもがなですが(笑)。  自称Dr.ヘルのおっさんです。みさき先輩のお父さんとは昔、研究者仲間という間柄だったのですが、 何らかのトラブルがあって今は恨みを抱くようになっています。 ☆川名博士(オリジナル)  勝手につくってしまいました、みさき先輩のお父さんです。 娘に戦争をさせることを心苦しく思っていながらも、そうせざるを得ない自分を責めております。 研究者という立場上、登場の機会は少なくなるのでは、と思っています。 ☆川名みさき(ONE〜輝く季節へ〜)  マジンガーZのパイロット。目が見えないはずなのだが、余裕で操縦をやってのけるところ、 かなり天才の模様です。スーパー系ということで、アツいシナリオに期待したいところですが、 本人がほのぼのした人なので、どうなることやら(汗)。 ※芦屋幹久(久遠の絆)については、今回は名前だけの登場ですので、  今後、正式に登場した際に改めて詳しく解説させていただきます。